財産

ちょうど昨年の今ごろまで、
ある会社に毎週通った。
会長のお考えをまとめる手伝いの仕事だった。
そこには担当課長はもとより、社長や、
ときには役員の方々も顔をそろえられ、
打ち合わせというよりは、
会議や勉強会のような雰囲気。
緊張は、ひと区切りとなる1年後まで解けなかった。


テーマは多岐に渡った。
人間の能力の話にはじまり、
実際の社会問題と関連付けて語られた、
睡眠、スポーツ、教育、メディア、貿易等はまだしも、
唯識仏教やドラッガーに至っては、
元々の勉強不足に加え、
その解釈が独特であったこともあり、
詳細はもとより、全体の輪郭でさえ、
ぼんやりとしたまま。
子どもがノートに薄く書かれた漢字を、
意味もわからぬまま、なぞるような気分だった。
力不足だった。


一方で、よく理解できたところもあった。
「生き方」について、語られた部分だ。
「人間は日々、自分の能力を高める努力をしなければならない。
 それを最大限に発揮する努力をしなければならない。
 そして、その努力がきちんと評価される世の中でなくてはならない」
正直、はじめは経営者の理論か、と思うところもあった。
しかしそれは、時に過酷な状況を乗り越えて、
事業を継続する中で感じ得た、実感のこもった言葉であり、
ご自身に向けてのものでもあった。


会長がお亡くなりになった、と、
昨日、お世話になっている出版社の社長さんから、
電話があったとき、言葉に詰まった。
私が関わらせていただいたプロジェクトが、
最終的な形になったという話を聞かず、
きちんと仕事をやり遂げられなかったという思いが、
ずっと胸につかえていたからだ。
いまにして思う。
何者でもない、50も年の離れた若造に、
なんと真剣に語りかけてくれたことか。
会長の言葉は、私にとって耳が痛いものばかりだった。
時々いただいた資料や、書きためた原稿を、
読み返すことにしよう。


心よりご冥福をお祈り申し上げます。


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2008年06月05日 Posted byデイクリップ at 22:10 │Comments(2)日記

この記事へのコメント
一度もお会いしたことはなかったのに、なぜかこみ上げてくるものがあります。どこか突き抜けすぎていて、ひとりぼっちだった。だから自分の考えてきたことを誰かひとりにでも伝えられたことは、会長さんにとって一番の大仕事だったのかもしれない、と思ったり。
また今度、お話聞かせてください。
Posted by ryuzo at 2008年06月05日 22:24
ryuzoさん、コメントありがとうございます。
いや、決してひとりぼっちってことはないんです。
1200名からの社員さんを率いてきたわけですし、
地域社会への貢献も、相当なものがあったそうです。
ただやはり、私の理解を越えている部分も多かった。
(少ないながらも)経営者と呼ばれる方に、
時々お会いさせて頂いておりますが、唯一無二の存在感。
飛び抜けた方はきっと、そういうものなんだろうと思います。
というわけで、近いうちに〜。
Posted by デイクリップデイクリップ at 2008年06月06日 18:51
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